1. 季節の変わり目に増える「冷え」と「しびれ」
「夜になると足先が冷えて眠れないんです」
「最近、手がしびれて物がつかみにくいんですよ」
診察室で、こんな訴えを耳にすることが増えてきました。多くの方は「冷え性だから仕方ない」と思っているのですが、実はその陰に血管や神経のトラブルが隠れていることもあるんです。
2. 血流の滞りが引き起こす冷えと痛み
血液は酸素や栄養を全身に運ぶ大切な役割を担っています。ところが流れが悪くなると、末端である手足に十分届かなくなり、**「冷え」や「だるさ」**として現れてきます。
特に注意したいのは次のような方です。
- 動脈硬化や糖尿病、高血圧がある
- 喫煙習慣がある
- 長時間のデスクワークで座りっぱなし
「ただの冷え」と思っていると、実は血管のトラブルが進んでいる場合もあるので、早めのチェックが大事です。
3. 神経が関わる「しびれ」のサインとは
一方で「しびれ」は、血流だけでなく神経が関係していることが多い症状です。
- 首や腰の骨が変形して神経を圧迫している
- 手首の神経が圧迫される「手根管症候群」
- お尻から脚にかけて痛みやしびれが走る「坐骨神経痛」
こうした場合は、冷えというよりも **「痛み」や「感覚の鈍さ」**を伴うことが特徴です。冷え性と見分けにくいこともありますが、しびれが長引く場合は要注意です。
4. 整形外科でできる検査と治療
整形外科では、まず症状について丁寧にお話を伺います。そのうえで、レントゲンやMRIなどの画像検査で骨や神経の状態を確認します。
必要に応じて、筋力の評価や神経の働きを調べる検査も行い、原因を探ってゆきます。治療は、リハビリ・お薬・注射などを症状に合わせて組み合わせていきます。
「冷えやしびれで整形外科?」と意外に思われるかもしれませんが、痛みや感覚の異常を伴う場合は、まさに整形外科の出番なのです。
5. 漢方で整える「めぐり」と「温め」
冷えやしびれには、西洋医学的な治療とあわせて、漢方を取り入れるのも有効です。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) … 血の巡りを整えて、冷えやむくみに
- 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん) … 腰痛や手足のしびれ、冷えに伴う症状に
- 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) … 関節の痛みや冷えをやわらげる
体質や症状に合わせて処方することで、体の内側から「めぐり」を良くし、じんわり温めていきます。
6. まとめ ― 冬を快適に過ごすために
手足の冷えやしびれは、つい「毎年のことだから」と我慢してしまいがちですが、体からの大切なサインかもしれません。
寒い夜、湯気の立つお茶を両手で包むときのあの温かさ。あの感覚を体の中でも感じられるように、日々のケアを心がけましょう。
もし冷えやしびれが長引いたり、痛みを伴うときは我慢せず、どうぞお気軽にご相談ください。小さなサインを見逃さないことが、冬を快適に過ごす第一歩になります。
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