1. なぜ年末に腰痛が増えるのか?

その背景には、次のような要因があります。

  • 寒さによる筋肉の緊張:冷えると血流が悪くなり、筋肉が硬くこわばります。柔軟性が落ちた状態で体を動かすと、腰に負担が集中しやすくなります。
  • 忙しさによる無理な動作:大掃除、買い出し、荷物の持ち運びなど、普段以上に腰を使う動作が増えます。
  • 疲労の蓄積:仕事の締め切りや行事で休養が後回しになり、体の疲れが抜けないまま動いてしまうことも腰痛の一因です。

つまり、年末は「寒さ × 無理な動作 × 疲労」が重なる腰痛のハイシーズンなのです。

2. 年末に多い腰痛のパターン

腰痛とひと口に言っても、原因や症状はさまざまです。

  • ぎっくり腰(急性腰痛症)
     大掃除で屈んだ瞬間や荷物を持ち上げたときに「グキッ」とくる典型的なケース。強い痛みで動けなくなることもあります。
  • 慢性腰痛の悪化
     もともと腰に不安がある方は、冷えや疲労で症状が悪化しやすくなります。
  • 坐骨神経痛
     お尻から足にかけてのしびれや痛みが出る場合、椎間板ヘルニアなどが背景にあることも。

こうした症状を「年末だから仕方ない」と我慢してしまう方もいますが、放置は危険です。

3. 痛めてしまったときの応急処置

もし腰を痛めてしまったら、まずは慌てずに次のポイントを実践しましょう。

  • 無理に動かさない
     発症直後は安静が第一。ただし寝たきりになる必要はなく、楽な姿勢で安静を保つ程度で十分です。
  • 冷やす
     急な痛みが出たときは、炎症を抑えるために患部を冷やします。保冷剤をタオルで包んで5分程度当ててみましょう。
  • 痛みが落ち着いてきたら温める
     数日後、痛みが和らいだら今度は温めて血流を良くし、回復を助けます。

強い痛みやしびれがあるときは、自己判断せず整形外科を受診してください。

4. 整形外科でできる診断と治療

整形外科では、問診や触診に加え、レントゲンや必要に応じてMRIで原因を調べます。「ぎっくり腰だと思ったら実は椎間板ヘルニアだった」というケースも少なくありません。正しい診断が、早い回復と再発予防につながります。

治療では、消炎鎮痛薬、湿布、ブロック注射、理学療法(牽引・電気治療)などを組み合わせて行います。痛みを和らげるだけでなく、再発を防ぐ生活指導も大切です。

5. 日常生活でできる予防の工夫

年末の腰痛を防ぐには、日ごろからの工夫がカギです。

  • 正しい姿勢を意識する:長時間座りっぱなしを避け、こまめに姿勢を変えましょう。
  • 動作を工夫する:荷物を持ち上げるときは腰を曲げず、膝を曲げて持ち上げるのが基本です。
  • 腰を冷やさない:腹巻きやカイロで腰を温めるのも効果的です。
  • 運動習慣を取り入れる:ウォーキングやストレッチで腰回りの筋肉を柔らかく保ちましょう。

こうした小さな積み重ねが、腰を守る大きな力になります。

6. 漢方でサポートする腰痛ケア

腰痛が慢性化している方や、冷えを伴うタイプには、漢方のサポートも役立ちます。

  • 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):冷えやしびれを伴う腰痛に。
  • 疎経活血湯(そけいかっけつとう):血流の滞りによる痛みに。
  • 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう):冷えや関節痛を伴う場合に。

体質や症状に合わせて選ぶ必要があるため、専門医にご相談ください。

7. まとめ:無理せず新年を迎えるために

年末はやることが多く、つい体のケアが後回しになりがちです。でも、「大掃除の後に腰を痛めて寝正月…」というのは避けたいもの。腰痛は、ちょっとした工夫と意識で大きく予防できます。

もし痛みが出てしまったら我慢せず、早めに整形外科へ。適切な診断と治療を受けることで、新しい年を安心して迎えることができます。

忙しい12月だからこそ、どうぞ腰を大切に過ごしてください。


この記事の著者

廣野 大介

こうの整形外科・漢方クリニック 院長

廣野 大介(こうの だいすけ)プロフィール詳細はこちら

日本整形外科学会 整形外科専門医

日本東洋医学会 専攻医