1. スマホ首=ストレートネックとは?その姿勢がどれだけ危険か

私たちの首(頸椎)は、本来、ゆるやかなS字カーブを描いていて、それがクッションのように、重たい頭をうまく支えてくれています。

ところが、長時間スマートフォンやPCをのぞき込むように使っていると、この大切なカーブがだんだん失われ、首が前傾かつ真っ直ぐに近い状態になってしまいます。これがいわゆる**「ストレートネック」**です。

頭の重さは、あなたの体重の約10%。体重60kgの方なら、ちょうどボーリングの球(約6kg)や2Lペットボトル3本分ほど。これが少し前に傾くだけで、首にかかる負担は倍増し、さらに60度傾くと、なんと27kgもの重さを支えることになります。これでは首や肩の筋肉が悲鳴を上げるのも無理はありません。

2. 「若いから大丈夫」は要注意!なぜあなたの首が悲鳴を上げるのか

「首や肩の痛みは年齢を重ねてから」なんて、そんなふうに思っていませんでしょうか?

最近は10代や20代でもストレートネックの症状を抱える方が本当に増えています。その背景にあるのは、次のような生活習慣です。

  • SNSや動画視聴での長時間スマホ
  • オンライン授業や在宅勤務で崩れた姿勢
  • 運動不足による筋力低下

どれも、「自分にも心当たりがあるな…」という方が多いのではないでしょうか。

「まだ若いから大丈夫」とつい思ってしまいがちですが、そのまま放置していると、姿勢のクセがどんどん定着してしまい、将来の慢性痛や猫背の大きな原因にもなりかねません

3. 放置すると深刻な悪循環に…肩こり・頭痛・めまいの正体

最初は「ちょっとした肩こりかな」と思っていたものが、気づけば次のような症状へと広がってしまうことがあります。

  • 首や肩の重だるさが常にある
  • 頭痛薬を手放せなくなるほどの頭痛
  • めまいや耳鳴り、ふらつき
  • 手のしびれ
  • 姿勢の悪化(猫背・巻き肩)

「ただの肩こりだから」と軽く考えて我慢していると、いつの間にか生活の質を大きく落とす悪循環にはまってしまうかもしれません。

4. 専門医に相談するタイミングと整形外科での治療

もし「頭痛が続く」「肩こりがいつもある」といった症状に悩んでいるなら、一度整形外科を受診してみませんか?

診察では、問診や触診で首や肩の可動域をチェックしたり、レントゲン検査でストレートネックの有無や頸椎の状態を詳しく確認してゆきます。そのうえで、あなたの生活習慣や体の状態に合わせた治療法を一緒に考えていきます。

  • リハビリや運動療法:理学療法士が姿勢の改善や筋力強化を丁寧にサポートします。
  • 牽引や電気を用いた物理療法:血行を良くし、硬くなった筋肉をほぐします
  • 必要に応じた薬物療法:つらい痛みをコントロールしていきます。

5. 毎日続けたい!スマホ首リセットストレッチ3選

ご自宅や仕事の合間にできる、日常に取り入れやすい簡単なストレッチをご紹介します。

  • ① あご引き運動(首の軸を整える) 椅子に座って背筋を伸ばしたら、あごを軽く引き、頭を後ろに押し出すようなイメージで5秒キープ。これを10回繰り返しましょう
  • ② 首の横ストレッチ(僧帽筋をほぐす) 椅子に座って、片手で頭を横に優しく倒します。反対側の肩が浮かないように注意しながら、20秒キープ。左右両方行ってくださいね。
  • ③ 胸開きストレッチ(巻き肩予防) 両手を背中で組み、胸を大きく開き、肩甲骨を中央に寄せます。そのまま20秒キープ。これを2〜3回繰り返しましょう。

※どのストレッチも、無理のない範囲で、呼吸を止めずに行うのがポイントです。もし痛みが出る場合は中止してください。

6. 体質改善に役立つ漢方の視点

東洋医学では、スマホ首による肩こりや頭痛を「気血の巡りの滞り」や「瘀血」と捉えます。西洋医学の治療に加え、体の巡りを整える漢方を併用することも、再発予防につながることがあります。

  • 葛根湯(かっこんとう):肩や首のこわばり、頭痛
  • 川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん):いわゆる片頭痛のような側頭部痛
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血流を改善し、冷えのある方の肩こり

漢方は体質によって合う・合わないがありますので、ご希望の場合は遠慮なくご相談ください

7. まとめ:小さな心がけが、未来の健康を守る

「まだ若いから大丈夫」と、つい無理をしていませんでしょうか。しかし、首の不調を放置すると、将来の健康に大きく影響することがあります。

大切なのは、体のSOSを無視せず、早めにケアを始めることです。

  • 正しい姿勢を意識する
  • 合間のストレッチを習慣にする
  • 症状が続くときは私たちに相談する

こうした小さな心がけが積み重なって、未来の健康を守ることにつながります。

首や肩の不調でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談いらしてください。整形外科的な治療と漢方を組み合わせ、あなたに合った形でサポートさせていただきます。一緒に体を整えて、快適な毎日を取り戻しましょう


この記事の著者

廣野 大介

こうの整形外科・漢方クリニック 院長

廣野 大介(こうの だいすけ)プロフィール詳細はこちら

日本整形外科学会 整形外科専門医

日本東洋医学会 専攻医