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院長ブログ
2025/08/07
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おうち時間の落とし穴!座りすぎで固まる股関節とその対策
おうち時間の落とし穴!股関節対策

おうち時間の落とし穴!座りすぎで固まる股関節とその対策


【この記事の概要】
在宅ワークや長時間のデスクワークが日常化する中で、「なんだか足の付け根が痛い」「股関節が動かしにくい」「立ち上がる時に腰が伸びない」と感じていませんか?実はその症状、“座りすぎ”による股関節の硬直が原因かもしれません。 股関節は、立つ・歩く・しゃがむといった日常のあらゆる基本動作に関わる、私たちの体を支える重要な関節です。このコラムでは、長時間の座位姿勢が股関節に与える具体的なダメージと、それによって引き起こされる身体の不調について、整形外科の視点から詳しく解説します。さらに、ご自宅でも簡単にできる効果的なストレッチ対策もご紹介。健康な股関節を取り戻し、活動的で快適な毎日を送りましょう。
読了目安:約5分

目次
1.在宅勤務の影響で増えている「股関節のこわばり」って何?
2.要注意!座りすぎが股関節に与える意外なダメージ
3.放置すると深刻に?姿勢と痛みの悪循環
4.そのこわばり、整形外科で診てもらいませんか?専門的なアプローチとは
5.毎日の習慣に!座りすぎ対策に効く「かんたん股関節ストレッチ」3選
6.まとめ:動かすことで守る、あなたの股関節の健康

1. 在宅勤務の影響で増えている「股関節のこわばり」って何?

「コロナ禍以降、家で過ごす時間が増えて、運動不足になった…」そう感じる方は多いのではないでしょうか。在宅勤務が定着したり、趣味で長時間座って作業したりする中で、「股関節の動きが悪いな」「椅子から立ち上がるときに足の付け根がつっぱる」といった、これまで感じなかった症状を訴える方が急増しています。 これはまさに、長時間同じ姿勢で座り続けることが引き起こす「股関節のこわばり」が原因です。椅子に座っていると、股関節まわりの筋肉や靭帯が常に縮んだ状態になり、その結果、柔軟性が著しく低下してしまいます。気づかないうちに進行してしまうこの“股関節のこわばり”は、早めに気づき、適切にケアを始めることが非常に大切です。

2. 要注意!座りすぎが股関節に与える意外なダメージ

股関節は、体幹(骨盤)と脚(大腿骨)をつなぐ、人体で最も大きく、かつ複雑な動きをする関節の一つです。歩く、走る、座る、立ち上がる、しゃがむなど、私たちの日常のあらゆる基本動作を滑らかにし、体の安定性を保つ上で中心的な役割を担っています。

しかし、長時間の座位姿勢が続くと、股関節には以下のような予想外のダメージが蓄積されていきます。

  • 股関節の屈曲(曲がった)状態が固定される 座っている間、股関節は常に曲がった状態(屈曲位)を強いられます。この状態が長く続くと、股関節の前側にある腸腰筋が短く硬くなり、伸びにくくなってしまいます。
  • お尻や太ももの筋肉が働かなくなる 座っている間、特に大臀筋やハムストリングスはほとんど使われません。これにより、筋力低下や萎縮を招きます。
  • 血流が悪化し、筋肉が緊張・萎縮する 長時間座ることで、股関節周辺の血流が悪くなり、筋肉に必要な酸素や栄養が十分に届かなくなります。

これらの悪影響が複合的に生じることで、立ち上がりや歩行がぎこちなくなったり、将来的な転倒リスクにもつながる可能性が高まります。

3. 放置すると深刻に?姿勢と痛みの悪循環

「ちょっとこわばるだけだから大丈夫」と股関節の不調を放置していると、やがて全身のバランスに影響を及ぼし、様々な慢性的な痛みや姿勢の崩れを引き起こしかねません。

  • 股関節が固い → 骨盤が前傾 → 反り腰に: 股関節が伸びないと体をまっすぐ起こすことが難しくなり、腰が反りやすくなり腰痛の原因に。
  • 股関節が開きにくい → 歩幅が小さくなる → 筋力低下: 歩き方に影響し、すり足のようになり、筋力も低下していきます。
  • 筋肉のアンバランス → 腰痛や膝痛の発症: 股関節周囲の筋力低下により、骨盤や膝への負担が増し、慢性痛を引き起こします。

このように、一見地味な「股関節のこわばり」も、放置すると全身に影響を及ぼす「体のSOSサイン」なのです。

4. そのこわばり、整形外科で診てもらいませんか?専門的なアプローチとは

「股関節のこわばりが気になる」「痛みが出てきた」と感じたら、まずは整形外科での早めの診察・評価がおすすめです。自己判断で様子を見るのではなく、専門家のアドバイスを受けることで、適切な対策を早期に始めることができます。

当院では、以下のような多角的なアプローチで股関節の健康をサポートいたします。

・丁寧な問診と触診、可動域のチェック
 痛みの種類や出現状況、股関節の動きの範囲などを細かく評価し、原因を探ります。


・必要に応じた画像検査(レントゲン、MRIなど)
 骨の変形や関節の状態、軟骨、靭帯、筋肉などの軟部組織の状態を客観的に確認し、痛みの原因を特定します。


・物理療法による筋緊張の緩和
 温熱療法や電気療法などを用いて、硬くなった股関節周辺の筋肉の血行を促進し、緊張を和らげます。


・理学療法士による専門的なストレッチ・運動指導
 患者様の股関節の状態に合わせ、腸腰筋や大臀筋、内転筋など、硬くなった筋肉を効果的に伸ばすストレッチや、弱くなった筋肉を強化するトレーニングを個別指導します。


・薬物療法
 痛みが強い場合には、内服薬や外用薬(湿布など)を処方し、症状を和らげます。


・必要に応じた漢方処方
 体質や症状に合わせて、西洋薬とは異なるアプローチで痛みを緩和したり、全身のバランスを整えたりする目的で漢方薬の処方も提案可能です。


痛みやこわばりが軽度なうちにアプローチすることで、将来的な変形性股関節症の進行予防にもつながる可能性があります。

5. 毎日の習慣に!座りすぎ対策に効く「かんたん股関節ストレッチ」3選

ご自宅で簡単にできる、股関節の柔軟性を高めるストレッチをご紹介します。椅子や床の上で手軽に実践できるものばかりですので、1日5分を目安に毎日の習慣にしてみましょう。


①腸腰筋ストレッチ(もも前〜股関節の付け根を伸ばす)

 目的: 座りすぎで硬くなりがちな股関節前側の筋肉(腸腰筋)を伸ばし、股関節の伸展(後ろに伸ばす動き)を改善します。

やり方

 1.片膝立ちの姿勢をとります。後ろに伸ばす方の脚の膝を床につけます。

 2.背筋を伸ばし、骨盤をやや前に押し出すようにゆっくりと重心を前に移動させます。後ろ脚のもも前〜股関節の付け根がじわじわと伸びるのを感じましょう。

 3.そのままの姿勢で30秒キープ。左右の足を入れ替えて同様に行います。


② 股関節の外旋ストレッチ(お尻・骨盤まわりを柔らかくする)

 目的: 股関節を外側に回す筋肉(深層外旋六筋など)や、お尻の筋肉(大臀筋)の柔軟性を高めます。


やり方:仰向けに寝て、両膝を立てます。

  1.右足首を左膝の上にかけ、数字の「4」のような形を作ります。

  2.左膝をゆっくりと胸に引き寄せると、右のお尻から股関節の外側にかけて伸びるのを感じられます。

  3.そのままの姿勢で30秒キープ。左右の足を入れ替えて同様に行います。

③ 椅子での内ももストレッチ(股関節の開きを良くする)

 目的: 内ももの筋肉(内転筋群)を伸ばし、股関節の開く動き(外転)を改善します。

 やり方
  1.椅子に浅く座り、両足を大きく広げて膝を外側に開きます。足の裏は床につけて踏ん張ります。

  2.両肘をそれぞれの膝の内側に置き、軽く膝を外側に押すようにしながら、上体をゆっくり前に倒します。内ももがじんわりと伸びるのを感じましょう。

  3.そのままの姿勢で30秒キープ。


※どのストレッチも、呼吸を止めず、反動をつけずにゆっくりと行いましょう。痛みを感じる場合は無理せず中止してください。



6. まとめ:動かすことで守る、あなたの股関節の健康

「座っているだけだから体に負担は少ないはず」――もしそう思っているなら、それが大きな落とし穴かもしれません。実は、体を動かさないことで関節は硬くなり、血行不良や筋力低下を招き、やがて痛みや様々な体の不調の原因になっていくのです。

股関節は、立ち上がる、歩く、階段を昇り降りするなど、私たちの日常生活の「当たり前」を支える、まさに要となる大切な関節です。もし足の付け根に違和感を覚えたときや、動かしにくさを感じたときは、それを体のSOSサインと捉え、早めのケアを心がけましょう。

そして何よりも、**日頃から意識的に「動かす習慣」**を取り入れることが、股関節の健康を守り、生涯にわたって活動的な毎日を過ごすための最も効果的な対策です。

気になる痛みやこわばりがある方は、どうぞ我慢せずに当院までお気軽にご相談ください。痛みを早く和らげる西洋医学的なアプローチと、筋力・柔軟性のバランス調整にも効果が期待できる漢方の視点を駆使して、あなたの股関節の健康と快適な毎日を全力でサポートいたします。




この記事の著者

廣野 大介

こうの整形外科・漢方クリニック 院長

廣野 大介(こうの だいすけ)プロフィール詳細はこちら

日本整形外科学会 整形外科専門医

日本東洋医学会 専攻医

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