第1章:事故直後に症状が軽くても注意が必要な理由

1-1 「痛くない=大丈夫」とは限らない

事故の直後は、体がびっくりして**“興奮状態”**になっており、アドレナリンというホルモンが出ることで、痛みを感じにくくなる傾向となります。当初は「少しぶつけただけ」「首がちょっと重いかな」くらいでも、数時間後や翌日に痛みやしびれが出てくるケースは珍しくありません。軽い追突でも、首のむちうち(頚椎捻挫)や腰の筋肉・靭帯の損傷が起きていることがあります。外からは分からなくても、体の中で“見えない変化”が起きていることも多いのです。

1-2 「様子を見る」は危険かも

「しばらく様子を見よう」と思って放置すると、炎症や筋肉のこわばりが進んでしまいます。結果的に、痛みが長引いたり、動かしにくくなったり。翌日になって、頭痛・肩こり・倦怠感・手足のしびれが出てきたら、それは体のサインです。無理せず、早めに整形外科を受診してくださいね。

 第2章:時間が経って現れる主な症状とそのメカニズム

2-1 遅れて出る“むちうち”の症状

むちうちは、首が大きくしなって筋肉や靭帯が伸ばされることで起こります。最初は軽い違和感だけでも、数日たってから次のような症状が出ることがあります。

  • 首・肩の痛みやこり
  • 頭痛やめまい
  • 手足のしびれ、感覚の鈍さ
  • 倦怠感、集中力の低下

自律神経や血流の乱れが関係しており、放っておくと治りが遅くなることもあります。早めに検査・治療をしておくと、後々の安心につながります

2-2 体が守ろうとする「防御反応」

人の体は、ケガをすると無意識に筋肉をギュッと固めて守ろうとします。この反応のおかげで一時的に痛みが軽くなるのですが、傷自体が治ったわけではありません。数日後に筋肉の緊張がゆるんでくると、隠れていた炎症や神経の刺激が一気に出てくることがあります。「最初は何ともなかったのに、急に痛くなってきた」というのは、まさにこの状態です。

 第3章:整形外科で行う交通外傷の検査と診断の流れ

3-1 初診のときに確認すること

整形外科ではまず、事故の状況や衝撃の方向、痛みの出方を詳しくお聞きします。シートベルトの有無や、頭を打ったかどうかも大事な情報です。そのうえで、動きの範囲や神経の反応、押したときの痛みなどを確認し、必要に応じて画像検査を行います。

3-2 検査の種類と目的

検査名 内容・目的
レントゲン(X線) 骨折や脱臼、骨の並びの異常を確認
MRI検査 靭帯や椎間板、神経の状態を詳しく確認
CT検査 骨や頭部の微細な損傷をより細かく確認

筋肉や神経の状態を見るには、MRIが役立つことが多いです。症状に合わせて、最適な検査を選びます。

 第4章:受診のタイミングについて

4-1 「数日後に痛くなった」でも遅くない

事故から数日たって痛みが出ることはよくあります。その場合でも、交通外傷として診察を受けられます。特に首・腰・肩・関節に違和感を感じたら、早めに整形外科へ。時間が経つほど治りが遅くなる傾向があります。

4-2 早期受診が未来の自分を守ることにつながる

早めに治療を始めれば、炎症を抑え、神経や筋肉の回復を助けられます。一方で、我慢して放っておくと、慢性的な痛みやしびれが残ることも。整形外科では、レントゲンやMRIなどの検査、リハビリまで一貫してサポートできます。気になる違和感があるときは、早めに相談してみてください。


この記事の著者

廣野 大介

こうの整形外科・漢方クリニック 院長

廣野 大介(こうの だいすけ)プロフィール詳細はこちら

日本整形外科学会 整形外科専門医

日本東洋医学会 専攻医