第1章:スキー・スノボでケガが多い理由

スキー場では、普段の生活とは全く違う環境で体を使います。そのため、整形外科ではこの時期、外傷の患者さんが急増します。その理由は大きく3つです。

  • ① 雪上では“足元が固定”され受け身が取りづらい
    両足はスキー板やボードに固定されているため、バランスを崩したときに “逃げる動き” が作れないことがあります。
  • ② 防寒で厚着 → 動きが大きく制限される
    スキーウェアは体温維持には最適ですが、肩・肘・股関節の動きが普段より制限され、転倒したときに関節へ大きな負荷がかかりやすくなります。
  • ③ 久しぶり・初めての人が多い
    一年ぶり、あるいは学生以来という人も多く、筋力・柔軟性・バランスが十分でない状態で滑り始めるケースが目立ちます。

第2章:特に多いケガとその特徴

ウィンタースポーツで起こりやすいケガには特徴があります。

  • 膝前十字靭帯(ACL)損傷【スキーに多い】
    転倒時、スキー板が外方向にひねられる動きで発生しやすい。 “バキッ”と音がした、膝が抜ける感覚、すぐに腫れて歩けない、これらは要注意で、早期受診が必要です。
  • 手首の骨折【スノボに非常に多い】
    初心者スノーボーダーの典型的外傷。転倒時、反射的に手をつくため手首に大きな衝撃が加わります。特に若い女性・骨が細い方に多く見られます。
  • 肩の脱臼・肩鎖関節損傷
    転倒して肩から落ちたときに発生しやすく、一度脱臼すると繰り返したり、スポーツ復帰までの期間が長くなることがあります。
  • 腰痛・打撲・尾骨の痛み
    後方に転倒した際に尾骨を強打し、長期間座るのが辛くなるケースもあります。

第3章:雪山で“反応が遅れる”理由

ウィンタースポーツで意外と重要なのが、寒さによる筋肉の“反応性低下” です。寒い環境では、

  • 筋肉が硬くなる
  • 反射が遅れる
  • 関節の柔軟性が落ちる
  • バランス能力が低下

こうした変化が起こります。つまり、普段なら体が自然と避けられる転倒も、冬場はうまく反応できないということです。初心者がケガをしやすいのは、技術の問題だけでなく、“体が寒さに対応できていない”ことも大きな理由なのです。

第4章:今日からできるケガ予防のポイント

ウィンタースポーツを安全に楽しむために、整形外科として意識してほしいポイントは4つです。

体を温めた状態で滑り始める

滑る前に軽くストレッチ。特に、太もも前、お尻、ふくらはぎ、肩甲骨回りを動かしておくと、転倒時の反応が良くなります。

疲れたと思ったら早めに休む

雪上は体力を消耗しやすく、集中力も落ちます。 “もう1本だけ” が大きなケガにつながることもあります。

手首のプロテクターは特に効果的

スノーボードの手首骨折は、手首サポーターの着用で大幅に減ります。初心者ほど着用すべきギアです。

転倒の仕方を知っておく

手をつかず、前腕全体で受けるイメージ。身体を丸めて転がるように倒れると、衝撃が分散されます。

第5章:まとめ|楽しむために“整えてから行く”という発想を

スキー・スノボは冬だけの特別なスポーツ。だからこそ、普段とは違うケガが起こりやすくなります。でも、「体を整えて、準備して、無理をしない」──この3つを意識するだけで、ケガのリスクはぐっと下がります。

スキー場で過ごす時間が、安全で楽しいものになるように。体の声を聞きながら、冬のスポーツを思いっきり楽しんでくださいね。


この記事の著者

廣野 大介

こうの整形外科・漢方クリニック 院長

廣野 大介(こうの だいすけ)プロフィール詳細はこちら

日本整形外科学会 整形外科専門医

日本東洋医学会 専攻医