第1章:なぜ“動いていないのに痛む”のか

「運動して痛くなるなら分かる。でも、ただ座ってるだけで痛いのはなぜ?」と不思議に思う方も多いと思います。実は、人の体は “同じ姿勢を続けることが一番苦手” なんです。

体重や重力の影響が一部の筋肉に偏り、動かさないことで血流が落ち、筋肉が固まり始めます。これが蓄積していくと、

  • 首の付け根がズンと重い
  • 肩甲骨の内側が張る
  • 腰がじわっと痛い
  • 足がむくむ

といった症状につながります。じっとしているのに疲れる理由は、体が「この姿勢はつらい!」とサインを出しているからです。

第2章:同じ姿勢で起きる体への3つの変化

同じ姿勢を続けると、体には次のような変化が起きます。

  • ① 血流が低下する
    筋肉が軽く緊張した状態で固定されるため、血管が圧迫されます。血流が落ちると、老廃物が溜まり、だるさや重さの原因になります。
  • ② 筋膜が固まる
    筋肉を包む“筋膜”は、本来はスルスルと滑る構造です。でも、動かないとその滑りが悪くなり、肩こりや腰痛の“張り感”として現れます。
  • ③ 関節が硬くなる
    関節は動かしてこそ潤滑されるもの。長時間動かないと、関節内の滑液が循環しにくくなり、動き始めに痛みや違和感が出やすくなります。

第3章:デスクワーク・運転・スマホ姿勢に共通する問題

整形外科では、次の3タイプの姿勢で痛みを訴える方が特に多いです。

デスクワーク

  • 首が前に出る(“スマホ首”と似た姿勢)
  • 巻き肩になる
  • 腰が丸くなる

これらが組み合わさることで、首肩の痛みや頭痛まで出ることがあります。

長時間の運転

  • 背中が丸まる
  • 片側の腰に力が入り続ける
  • 下肢の血流が悪くなる

運転後に腰やお尻の痛み、足のしびれを感じるのはこのためです。

スマホ姿勢

  • 首が下を向く
  • 頭の重さが首にダイレクトにかかる
  • 背中が丸まって呼吸が浅くなる

スマホ首は、首の負担が通常の2〜3倍に跳ね上がると言われています。

第4章:1分でできる姿勢リセット法

姿勢を完璧に保つ必要はありません。むしろ、「こまめに姿勢を変える」ことの方がずっと効果的です。

  • 肩甲骨を5回ぐるっと回す
    ゆっくり前→後ろに大きく回すだけで、胸が開き、首肩の緊張がふっと軽くなります。
  • 背伸び+深呼吸
    両手を上に伸ばして、鼻から深く吸う → 口から吐く。これを3回繰り返すだけでも、背中の強張りが取れます。
  • 30分に1回だけ立つ
    1分でOK。立ち上がって一歩歩くだけで血流が回復します。
  • 足首を回す
    座ったままでもできる簡単な方法。足のむくみと冷えの改善に効果的です。

第5章:まとめ|同じ姿勢を避けることが最大の予防

体は「完璧な姿勢」よりも、「こまめな変化」を求めています。

デスクワーク、運転、スマホ時間。どれも現代の生活に欠かせないものですが、同じ姿勢が続くことで、首・肩・腰のトラブルが起きやすくなります。

痛みは“姿勢を変えて”という体からのメッセージ。1分のリセットを積み重ねるだけでも大きな差が出ます。無理をせず、定期的に体をゆるめながら、毎日の姿勢と上手に付き合っていきましょう。


この記事の著者

廣野 大介

こうの整形外科・漢方クリニック 院長

廣野 大介(こうの だいすけ)プロフィール詳細はこちら

日本整形外科学会 整形外科専門医

日本東洋医学会 専攻医